2021年9月23日、初の写真集を発売することになりました。半ば衝動的にデザイン事務所をたたんで、カメラを持って旅に出て。それから10年が経ち、ひとつの節目として撮りためた写真を一冊の本に綴じ込めました。 テーマは好奇心。ひとが何に興味を持ち、熱中し、どのような行動を起こすのか。そして、ひとはこの世界に何を生み出すのか。机に並べた10年分のネガを前に、結局ぼくは他者に興味を持っていて、彼らがどんなことを考えているのかを知りたいんだろうなと思いました。写真集には、そんな自分自身の好奇心の対象として選んだ被写体、世界各地で活動する個性豊かなアーティストたちの肖像や、彼らに会いに行く長い旅の道程で目にしたランドスケープが断片的に収められています。 すべてを把握しようとすると行方知れずで複雑に感じる世界ではありますが、誰もが自分の興味に没頭できる小さな聖域を持つことで、きっと他者にもっと寛容になれ…
Read MoreJournal
〈写真展〉西山勲写真展「Secret Rituals」
〈写真展開催のお知らせ〉 9月23日(木)より、写真家 西山勲の初となる写真集「Secret Rituals」の発売を記念し、写真展を開催いたします。 雑誌やWeb媒体で活躍する傍ら、世界中を旅しながら、自らの手で取材・編集・制作・発行までをも行い、世界各地で出会ったアーティストたちの日常をドキュメントしたビジュアル誌「Studio Journal knock」を発行する写真家・西山勲氏。 2013年~2019年にかけて世界各地の芸術家たち訪ね撮影した写真群で構成された本作「Secret Rituals」には、創作の場で自らに内在する美と向き合う表現者たちの多様な営みが、親密な眼差しによって写し出されています。 ひとが潜在的に持つ好奇心から引き起こされる様々な事象や、創作物が生み出される背景に興味を抱き、その対象として芸術家を被写体にし、この世界を深い洞察と独自の鋭い視点で…
Read More〈 写真展 〉Ephemeral Paradise
〈写真展開催のお知らせ〉 8月15日(月)より、東京・吉祥寺にある書店〈book obscura〉にて「Studio Journal Knock」7冊目となる最新号「Ephemeral Paradise(エフェメラル・パラダイス)」の発売に合わせた、リリース・エキシビションを開催します。 8月18日(日)にはオープニングレセプションを開催いたしますので、皆さまお誘い合わせのうえ是非ご来店下さいませ。 *一般発売に先がけbook obscura店頭に新刊が並びます。一足早く最新号を手にとっていただる機会です。 /////開催概要///// タイトル:Studio Journal Knock 7 “Ephemeral Paradise” 期間:2019年8月15日(木)~9月9日(月) 12:00-20:00 ※火曜・水曜日は定休日 bookobscura “Ephemeral …
Read More〈 Issue 7 〉North Africa:旅の準備
いよいよ3月から、Studio Journal Knock 新刊に向けた取材の旅が始まります。〈Issue7 〉North Africa(仮)では、美しい地中海のコーストラインを旅しながら、北アフリカの国々で活動する若いアーティストたちを訪ねます。出発を来週に控え、現在は各国のアーティストたちに取材オファーをしたり、機材やカメラバッグにあれこれ迷ったり、ビザの申請に戸惑ったり…。1ヶ月に及ぶアフリカ旅を前にバタバタと焦りながらも準備を行なっています。今回は相棒である妻は日本で留守番ということで久々のひとり旅。時間と精神的余力のある限り、このblogやInstagram(@knock_magazine)で旅の様子をお伝えしていこうと思います。ぜひお付き合いいただけると嬉しいです。では! I am so excited to announce that I am finally beginni…
Read MoreMurmansk – Teriberka
妻の体調も戻り、ムルマンスクでの撮影も終わったところで「せっかく北の果てまで来たのだから、北極海を見てみたい」。そんな考えが頭をよぎってしまった。向かった先はムルマンスクから北東へ130km、コラ半島北端にある小さな村チェルベルカ。古くは1523年にロシア人入植者が目撃されているそうだが、正式にはバレンツ海を望むムルマン沿岸地域への入植が活発化した1860年代に、多くの人々が住み着いたとされる最果ての地。19世紀後半になって、今もその名残を微かに残す教会や灯台、気象台、大規模な家屋などが建設され本格的な開発がなされている。映画「Leviathan/裁かれるは善人のみ」のロケ地に選ばれたというチェルベルカの荒廃的風景は、きっと人によってはたまらなく郷愁を誘うだろう。開発当時に建設された多くの建造物は倒壊・腐食し、そこらじゅうに打ち捨てられている。幾つか新しく建築されたアパートや家々があるもの…
Read MoreInto the Arctic circle
ロシアの北の果てを目指して、まずその経由地としてモスクワから北へ2000kmのところに位置するムルマンスクへ到着した。モスクワからサンクトペテルブルクまでの寝台列車で7時間、そしてそこからムルマンスクまで27時間かかった。地図上では北極圏に位置するムルマンスクではあるが、降雪もまだ先の予報でやや肩透かしを食らってしまうほど暖かい。温暖な大西洋海流が流れ込む影響で、真冬でも零下15℃程度を下回ることのないムルマンスクの港はロシアにとって数少ない重要な不凍港のひとつで、ソビエト連邦時代から軍の要衝として位置付けられる。冷戦期には海軍の潜水艦の基地として、ソ連崩壊の後もロシア海軍の北方艦隊、原子力潜水艦の基地として北極圏における重要な軍港なのだという。最近では石炭輸出の拠点でもあり、高台から見下ろす港には列車で運ばれてきた石炭を昼夜クレーンで大きな船へ詰め替える様子が伺える。北極圏最大の都市であ…
Read MoreNew Journey
Studio Journal knock東欧編の取材がいよいよスタート。その出発点としてまずはロシアはモスクワへ到着しました。一ヶ月ほどフィリピンはガパオで語学留学中だった妻のマミともシェレメーチエヴォ国際空港で無事に合流です。夫婦とはいえ久しぶりすぎて嬉し恥ずかしなんだかギクシャクしてしまいます。これは以前ぼくらがイスタンブール滞在中に、ぼくだけモスクワでの撮影のため2週間ほど留守にしたあと、再会したときの印象と一緒。そんな時、羽を伸ばしてるのはだいたい彼女の方で、一回りたくましくなっているのが不思議です。今回も日々英語生活に浸っていた彼女はなんだか自信に満ちていてなんとも頼もしい。さて取材開始とはいえ、長い旅です。今後の計画を立てながら、まずはロシア料理も食べたいし気になる場所にも行ってみたいということで、ここ二三日は観光に集中することにしました。こんなこと前回の旅ではなかったように思…
Read MoreStudio Visit: Cintia Cris
僕らはタクシーをチャーターし、歌声をたどるように ラウロ・ジ・フレイタス市アレイア・ブランカ地区という郊外までやってきた。 サルヴァドール市街地から幹線道路を東へ15キロほど走った所にある小さな村だ。 いかにも南米らしい鮮やかな鳥たちが歌うペットショップの前で待っていると 二人乗りのスクーターが突然現れて目の前に止まった。 「ムイート・プラゼール、アミーゴス!」 瑞々しい果実のようなキスで僕らを迎えてくれた美しい女性こそが 宿のテラスで聴いた歌声の持ち主、シンチア・クリスだった。 シンチアにとって初めての舞台となったのは、サルヴァドール・イタプアにある公立学校のステージだった。8歳の時のこと。「父が真剣な表情でお前には才能がある、と何度も何度も褒めてくれたのを覚えてる」。それ以来、シンチアの家にはキーボード、打楽器やバイオリンなど様々な楽器が増えていった。「特に嬉しかったのがマイクとギター…
Read MoreStudio Visit: Jorginho do Pandeiro
リオ・デ・ジャネイロ南部、ポン・ジ・アスーカルの麓に ブラジル最古のポピュラー音楽、ショーロ専門の音楽学校がある。 週に一度、土曜日に開講される「エスコーラ・デ・ムジカ」には 老若男女様々な人が集まり、真剣な面持ちで楽器と向き合っている。 僕はバスに乗り、ブラジルの伝統音楽が脈々と受け継がれる 早朝のリオ州立大学へ向かった。 1964年の結成からショーロ黄金時代を駆け抜け、今もなお活動を続けるエポカ・ヂ・オウロという名門楽団がある。その中心で指揮者のごとくパンデイロを叩くのが、生きる伝説と呼ばれるジョルジーニョ・ド・パンデイロだ。その息子セルシーニョ・シルバ、そして孫のエドゥアルド・ネヴィスは親子孫三代で教壇に立ち、ミュージシャン達の熱心な眼差しと向き合っている。 Located at the base of Pão de Açúcar in southern Rio de Janeiro…
Read More