ロシアの北の果てを目指して、まずその経由地としてモスクワから北へ2000kmのところに位置するムルマンスクへ到着した。モスクワからサンクトペテルブルクまでの寝台列車で7時間、そしてそこからムルマンスクまで27時間かかった。地図上では北極圏に位置するムルマンスクではあるが、降雪もまだ先の予報でやや肩透かしを食らってしまうほど暖かい。温暖な大西洋海流が流れ込む影響で、真冬でも零下15℃程度を下回ることのないムルマンスクの港はロシアにとって数少ない重要な不凍港のひとつで、ソビエト連邦時代から軍の要衝として位置付けられる。冷戦期には海軍の潜水艦の基地として、ソ連崩壊の後もロシア海軍の北方艦隊、原子力潜水艦の基地として北極圏における重要な軍港なのだという。最近では石炭輸出の拠点でもあり、高台から見下ろす港には列車で運ばれてきた石炭を昼夜クレーンで大きな船へ詰め替える様子が伺える。北極圏最大の都市であるムルマンスクだけど、暗くなっても外で子供が遊んでいたり女性がひとりで歩く姿に治安の良さを感じさせる。ムルマンスクに着いてから妻が風邪をひいてしまい少しこの街に滞在することにした。彼女が回復するまでゆっくりこの街を歩いてみようと思う。
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