写真家のパスカル、リタ夫婦が15年前にここコルシカ島のCap Corse(キャップ・コース/島のなかにある島)に購入した17世紀頃に建てられた古い家。18世紀に大きく改装されたところまでの記録はあるが、具体的にいつ頃建てられたのかはわからないそうだ。購入した時はほとんど廃墟。パスカルとリタが何年も何年もかけて修理、改築、リノベートした彼らにとって大切な家。掃除が行き届いているのは週に一度来てくれる同じ村に住む人の仕事によるもの。至る所に写真や絵画がかけてある。小さいけれどアンリ・カルティエ=ブレッソンのオリジナルプリントがさりげなく。イタリアかどこかの下町で両脇にワインボトルを抱えてはにかんだような表情の少年の写真。淡いオレンジと白を基調にした壁の配色。剝げかけたペンキが熟れた雰囲気を演出してるし、同時に乾いた地中海の古い邸宅というイメージを与えてくれる。ぱりっとのりのきいたシーツと新しいタオル。洗顔用の小さめのものとバスタオルは、赤とベージュ。トイレは最小限の照明で落ち着くし、20帖はあるような広いバスルームは毎朝シャワーを浴びる気にさせてくれる。中央には大きなアンティークの白いバスタブ。緑色の大きな石づくりのシャワー室。大きな鏡とシンクも古くから使われているものを再利用している。そして何と言っても地中海を見下ろすことのできる高台のロケーション。眼下に見える古い教会の鐘楼をポイントにした景色は何ものにも代え難いものだと思う。ハーバーまで車で10分、村の人々はお互いをみんな知っていて、ちょっと買い物にスーパーへいけば挨拶だけで10分はかかってしまう。警察もいない、病院もない。(もちろんバスチアなど大きな街にはいる)家に鍵をかける必要もないそうだ。なんだか昔の日本の風景のようで安心する。パリでバリバリと仕事をしていたパスカルとリタにとっても、そんな安心感とゆったりとした暮らしが、この島に移り住んだ大きな理由だと教えてくれた。
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