1924年に結成、90年の歴史を持つ老舗ソンバンド「セプテート・ティピコ・デ・ソネス」。 ハバナ市街地の目抜き通りを歩けば、強烈に郷愁を誘う彼らの演奏が聴こえてくる。 甘く気怠いトランペット、軽快なマラカスとボンゴが客の体を揺すり、 高音のソロがファニカとチャンチャンのお遊びをもの悲しげに歌い上げる。 バンドのオリジナル曲よりも知名度の高い名曲の演奏を終えた男はゆっくりと椅子に腰掛け言った。 「9歳の頃から色んな人の歌を歌っているからね。どの曲も自分たちの曲に思えるよ」。 今年で92歳になるエルネストは、休憩中にも関わらず彼らのオリジナル曲を少しだけ弾いてくれた。 「ブエナ・ムジカ!」良い曲ですね。僕が言うと首を横に振った。 「まだまだだよ。あと何十年かしたら良い曲になるだろうがね」と笑った。 Found in 1924, son band “Septeto Tipico de Sones…
Read MoreStudio Visit: Irina and Pavel
キューバン・サルサバンド「グルーポ・ノヴォ・アルテ」。 シンガー・バイオリニストのイリーナと、ギタリストのパヴェルが結成して間もないバンドだ。 ふたりは昼間学校で音楽教師として働き、夜はキューバ各地のレストランやバーで演奏している。 「学校では、楽器や歌、ダンスを教えてるんだ。6時に帰ってきてシャワー浴びてまた仕事(笑)」 偉いなぁ。毎日大変でしょう? 彼らのモチベーションの源を知りたくて尋ねてみた。 「将来はビッグバンドで演奏したいからね。場数を踏んで実力をつけておかないと」 彼らの演奏は素晴らしく、カラーコピーのジャケットがカバーになった手製のCDを彼らから買った。 いつかプロの奏者となり、イタリアやスペインを旅するのが夢だというふたりは 素晴らしい未来への予感で満ちた笑顔を残して、ステージへと戻っていった。 Cuban salsa band “Grupo Novo Alte” is …
Read MoreStudio Visit: Alex Cepeda
「この国で芸術家として生きるには、筆を持つ以前に意志と覚悟が必要なんだ」 ハバナから南東へバスで6時間、かつてサトウキビ取引と奴隷売買で繁栄した 古都トリニダーで活動する画家のアレックス・セペーダは、そう言って笑顔を見せた。 「そもそも筆やアクリル、カンバスといった画材の入手が難しいんだ。買う余分な金もない。 2人の小さな子供もいるし、このスタジオの支払いもある。なかなか簡単ではないよ」 アレックスは真新しいカンバスに丁寧に下地を塗りながら肩をすくめる。 「でもね、目の前にある限られた道をどれだけ豊かな気持ちで歩けるかが重要。 自分の人生を愛するんだ。女性や音楽のようにね。それがこの国の男の生き方だ」 “To live in this country as an artist, you first need a strong will and commitment before you e…
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