2日間続いた強風、というか嵐もようやくおさまった。マシューの話だと明日には海も静かになるんじゃないかということだったけど、二人の気が変わって今日ダイブしてみようということになった。車のスペースがあるか確かめるから待っててと言われたので、もしかしたら二人だけで行きたいのかななんて日本人的な気遣いを発揮し、今日は遠慮しようかと思案していた矢先にふたりが笑顔で「Isao!スペース出来たよ!」って言ってくれるもんだから嬉しくなった。ダイビングの準備も板についたもので(と言っても僕はスキューバなんだけど)ウェットスーツやらゴーグルやらブーツやら色々をまとめて運ぶのもいちいち指示を受けなくて出来るようになっただけで、何だか彼らの一員になれたような気分。いつものように助手席に僕、後ろにオーテンスの配席で出発。眩い光が満ち溢れる山道をくねくねと進む。たった一週間だったけど、こうして同じ道を同じメンバーで同じ曲を聴きながら過ごした日々は本当に美しい。※ちなみにいつも聴いていた曲は、Vinicius de MoraesのMaria CreuzaとToquinhoのライブ盤。特に11曲目のCatendeって曲が僕らの頭をリフレインして、暗にテーマソングのようになっていた。「ヘイラー、ヘイラー」という優しいコーラスがクセになるのだ。今日のポイントはいつものように、マシナジオから南へ下りバスチアまで5キロほど手前にある小さな入り江。波はほとんどなくフラット。風は少しあるものの、すでにふたりの顔は確信に満ちたように笑顔を隠し切れていない。ポイントに着くなりオーテンスがいつものように海中の様子を見るために入水。数分後、彼女が海面から顔を出すと満面の笑顔でガッツポーズをくれた。どうやらこれまで最高のコンディションだそう。ふたりは踊るような様子で準備に取りかかる。オーテンスの言った通り海中の様子は、これまでの状態とは比べ物にならないと言っていいほど最高の状態だった。ふたりのインスタレーションの様子が鮮明に見えるのだ。僕は夢中になって(シュノーケルすら使わずに)両足を揃えて波打たせるドルフィン泳法をマスターし、ぐんぐんと海中を移動した。何度か水も飲んだけれど気にならないほどに彼らの動きに釘付けになった。30分ほどで彼らの酸素がなくなり浮上を余儀なくされたけれど、僕の足はもう限界だったようで突然ふくらはぎのスジがぴーんと張り、足がつった。マシューがぐいと太い腕で伸ばしてくれたのでパニックにならずにすんだけれど、久しぶりの足釣りに自分の老いと衰えを感じてしまった。とにかくオーテンスの笑顔が戻ってよかった。帰り道はみんなで例の歌を歌いながらいつもの山道を走った。
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