僕らはタクシーをチャーターし、歌声をたどるように ラウロ・ジ・フレイタス市アレイア・ブランカ地区という郊外までやってきた。 サルヴァドール市街地から幹線道路を東へ15キロほど走った所にある小さな村だ。 いかにも南米らしい鮮やかな鳥たちが歌うペットショップの前で待っていると 二人乗りのスクーターが突然現れて目の前に止まった。 「ムイート・プラゼール、アミーゴス!」 瑞々しい果実のようなキスで僕らを迎えてくれた美しい女性こそが 宿のテラスで聴いた歌声の持ち主、シンチア・クリスだった。 シンチアにとって初めての舞台となったのは、サルヴァドール・イタプアにある公立学校のステージだった。8歳の時のこと。「父が真剣な表情でお前には才能がある、と何度も何度も褒めてくれたのを覚えてる」。それ以来、シンチアの家にはキーボード、打楽器やバイオリンなど様々な楽器が増えていった。「特に嬉しかったのがマイクとギター…
Read MoreStudio Visit: Jorginho do Pandeiro
リオ・デ・ジャネイロ南部、ポン・ジ・アスーカルの麓に ブラジル最古のポピュラー音楽、ショーロ専門の音楽学校がある。 週に一度、土曜日に開講される「エスコーラ・デ・ムジカ」には 老若男女様々な人が集まり、真剣な面持ちで楽器と向き合っている。 僕はバスに乗り、ブラジルの伝統音楽が脈々と受け継がれる 早朝のリオ州立大学へ向かった。 1964年の結成からショーロ黄金時代を駆け抜け、今もなお活動を続けるエポカ・ヂ・オウロという名門楽団がある。その中心で指揮者のごとくパンデイロを叩くのが、生きる伝説と呼ばれるジョルジーニョ・ド・パンデイロだ。その息子セルシーニョ・シルバ、そして孫のエドゥアルド・ネヴィスは親子孫三代で教壇に立ち、ミュージシャン達の熱心な眼差しと向き合っている。 Located at the base of Pão de Açúcar in southern Rio de Janeiro…
Read MoreStudio Visit: Tercio Ribeiro
リオ・デ・ジャネイロ中心地にある小高い丘サンタテレーザで カヴァキーニョ(ブラジルの弦楽器)工房を営むテルシオ・ヒベイロ。 6年前、国立病院に勤務する医師から転向し、ルチエ(楽器職人)として新たな人生を歩み始めた。 テルシオの作る美しいカヴァキーニョの音色は瞬く間にリオのミュージシャンから支持を集めた。 現在はリオ随一の人気ルチエとして活動する傍ら、 再び医師としてパラチーという貧しい町へ週に3回の訪問診療を行っている。 訪問診療のために通う町パラチーは、ふたりがハネムーンで滞在した思い出の場所。 医療の行き届かない貧しい地域に住む子供たちと話をするうちに、 彼らの声を集めたドキュメンタリーフィルムを制作することを計画するようになったというテルシオ。 新たな分野へ挑戦することに恐れはないのだろうか? 彼は、僕の問いにこう答えた。 「医師として、ルチエとして、世の中を少しでも良くするチャンス…
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